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statement

「私」と「私以外」を形作るものを元に制作をしています。

その「私」と「私以外」を形作るものを私は「輪郭線」として捉えています。

私たちは、現実には存在しない、人の主観のみが認識する線を通して、ものの形を捉えようとします。

その認識は、自己と他者の関係性の捉え方とも似ています。

私の思う「私」と他者から見た「私」。その二つの交わりの中から「私」は生まれます。

二つのものが接触する時、接する部分において輪郭線は立ち現れ、二つを分断して一つの形をなします。

 

輪郭線において、"私"と"私以外"は同じ形を孕んでいる。

 

「私」の身体を基準に輪郭線を再取得することで、「私たち」を包括している”世界”を捉えられると考えています。

 

その輪郭線を再取得する方法として、トレースの手法を用いています。

そして、その行為を繰り返して画面上に集積させた成果物を作品としています。

 

その時、私が選び取った輪郭線が「その時」の私の記録として残り、一つの画面に重なり合っていく。

「その時」は常に過去になり続けますが、私は、過去の蓄積は空間的な奥行きを持たないと感じています。

「その時」が思い出されるのは「今」に浮上してきた時です。

その感覚を画面に落とし込むために、全て表面において並列になるように蓄積させています。

そうすることで具体的な形が互いに打ち消し合い、意味を失うけれども、たしかにそこに存在しています。

その中で方向を持って進む時間、度々分断されて生まれた多層のレイヤーを一枚に圧縮したい。

 

私という主観が形を写し取っていく時間の蓄積が、私以外と同じ風景を見るための新しい輪郭線になればと期待しています。

​2017.8.10    吾郷 佳奈

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